2001年「よこみち孝弘と新年交礼会」
横路孝弘新年のご挨拶全文

2001.1.13

 明けましておめでとうございます。
 昨年の衆議院選挙では皆さんのご支援を頂きまして、本当にありがとうございました。心から感謝を申し上げます。
 21世紀がスタートしました。新たな決意で、国会で大いに頑張って参りたいと思っています。

 20世紀の一番の大きな問題は、何と言っても戦争の時代であったことです。ですから21世紀は人類が抱えている様々な問題を何としても解決して、平和な時代にしていかなければならないと思っています。

 さて、20世紀中からそういう努力をしている地域があります。ヨーロッパです。
 ヨーロッパは第1次大戦、第2次大戦と、2つの世界戦争の舞台でした。戦争が終わったとき、ヨーロッパの政治指導者たちは、「再び戦争を起こせば、もう本当に勝者はいない。何とか戦争のないヨーロッパ、そして世界をつくろう。そのためには国家という壁をできるだけ低くしていこうではないか」と努力を始めたのです。そして1953年、ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体条約というのが成立しました。
 それから50年、政治指導者が代わっても、全ての指導者がヨーロッパの政治的経済的な統合を大きな目標にして努力してきました。その結果、統一したヨーロッパ議会ができました。中央銀行もあります、裁判所もあります。そしてヨーロッパの共同通貨「ユーロ」も誕生しました。昨年は、EU加盟国のうち14カ国が軍隊を出し、自国を守るというよりはこの地域と周辺事態のいわば危機管理を行う緊急対応部隊もできました。

 将来の姿は必ずしもはっきりしていませんけれども、大統領をもって執行機関を持とうというヨーロッパ連邦国家も考えられているのです。
 この中心になってきたのはドイツとフランスでした。そして何より、こうした共同体をめざして将来へのビジョンを共有化しながら進めることができたのは何故か、それは「歴史を共有」したからです。歴史の見方が各国でそれぞれバラバラならば、将来を共有することはできないと思います。
 ドイツは、ナチスの歴史と真正面から向かい合い、そしてこのナチスがいろいろ行なったことに目をつぶることなく、子供たちの歴史教育をしっかり行いました。
 そして周辺諸国との信頼と友情関係を築くために、私はシュミット前独首相から聞いたのですが、シュミットさんは当時のフランス大統領ディスカールデスタン氏と月に1回は会ったり話しをし、重要な政策のときはドイツ国内で発表する前に彼に説明したそうです。
 だから冷戦が崩壊して東西ドイツが統一しようとしたとき、イギリスのサッチャー首相がフランスの当時の外務大臣に対して「ドイツ統一に反対しよう」と声をかけたそうですが、フランスはそれを断って、ドイツ統一が誕生したわけです。
 巨大なドイツの統一には、周辺諸国は本来ならば不安でしょう。しかしポーランドもチェコもフランスも、これらの国がみんな賛成したのは、やはりドイツが歴史と直面し、周辺諸国との信頼を勝ち取るために努力してきた、その50年の積み重ねがあったからだと思います。

 「それはヨーロッパの話でアジアは違う」とおっしゃる方がいます。確かにアジアは経済的発展の段階も、そして歴史も文化も、宗教も言葉も違う、体制も違います。
 しかしアジアにも新しい動きがあります。アセアン諸国10カ国がアセアン地域フォーラム構築のため、日本やアメリカも入ったアジアにおける信頼醸成措置、東南アジアを中心とした信頼醸成措置のために努力してきました。
 そして昨年、これにアセアン+3(プラススリー)、スリーというのは日本と韓国と中国です。これらが首脳会談を持ちながら、少なくとも経済統合へ努力をしよう、経済統合を模索していこうと、アセアン+3が誕生しようとしています。
 新しい概念は「東アジア」です。「東南アジア」、「北東アジア」という言葉と概念はありましたが、東アジアという用語を含めた新しい概念がいま誕生しようとしています。
 そのときに一番問題なのは何か、それはやはり「歴史を共有」することだと思います。大事な点での歴史の見方がアジアの国々や日本などで違いがあったのでは未来を共有することはできません。
 ヨーロッパで50年かかったことを、日本はできなかった。これから100年かかってもそれをしっかりやっていかなくてはいけないと思っております。

 このように、国家の壁を少しでも低くしていこうと努力しているときに、この1〜2年、日本国内で20世紀末になって突然言われてきたのが新しいナショナリズム、国家主義、そして歴史の抹殺であります。
 歴史を変える、もし日本がそんなことをやってしまえば、もう間違いなくアジアの孤児になってしまいます。やはりドイツと同じように歴史を直視していかなくてはいけない。偏狭なナショナリズムというのは紛争や戦争を招いてしまいます。
 私は空爆で多くの犠牲者を出したユーゴスラビアの実情を聞きました。ユーゴの国民は言語も共通で、そして民族間でお互いに結婚したりしているから、親戚にもそれぞれの人々がいる。イスラムやキリストといったような対立があったわけではなかった。
 しかしそんな中で、民族主義を煽った政治家が出てきたのです。民族間で些細な事件が起き、それが重なっていくと、だんだん憎しみに変わり、そしてお互い殺し合うようになった。ですから今回のユーゴ問題について、民族主義を煽った政治家との戦いに我々は負けたと有識者の人々は言っています。
 日本でも他国と何かあると、すぐ国民の感情がカーッと動いてしまいます。私は民族主義や国家主義を煽る政治家、そして歴史を変えようとする政治家、あるいはそういう動きに対して、厳しく対決していかなければいけないと思っています。

 何と言っても平和な日本でなくてはなりません。そのための日本の努力が問われています。その努力はやはり「国連を通じての協力」だと思います。日米という2カ国による国際協力ではなく、やはり国連を通しての協力でなければなりません。そうでなければ日本はアメリカの名実ともに手先になってしまう。
 世界の紛争の原因のほとんどは貧困にあります。この貧困をどう解決していくのか、それは軍事力では解決できません。
 PKOなどが必要であるならば、自衛隊を派遣するのではなく、国連協力法をつくって組織を設立し、文民警察や医療班、あるいは行政や司法のプロなどで構成する、そういったタスクフォースをつくって国際協力をしていくということが必要です。
 そんなことのできる日本の社会、アジアや世界に向けての外交、国際協力を進めていかなくてはならないと思っております。

 もうひとつ、国内のことについて一言だけ申し上げたいと思います。
 新しい世紀になって、北海道開発庁もなくなりました。開発という言葉、あるいはGDPで考える思考から発想を変えていかなくてはいけないと思います。
 発展が遅れているから開発だ、あるいは南北はGDPをプラスにと言われていますが、考えてみますとGDPは穴を掘ったり埋めたり、道路を掘ったり埋めたりするだけでプラスになります。
 物を生産してそれが売れなくて捨ててしまっても、これもGDP上はプラスになるわけです。だからプラスの中身が何なのか、GDPの中身が何なのかということが大変大事だと思います。
 いま人々が求めているのは様々なサービスです。自分の健康を維持していきたい、あるいは自分自身を高めていきたい。ですから医療や介護、福祉といったサービス産業、レジャー、文化、教育といったサービス産業に国民のニーズはあるのです。また企業も人材派遣や人材教育、情報通信関連のビジネスサービスなど、様々な企業サービスに需要があります。
 今までのような公共事業投資中心の財政投資をいくらやっても景気は良くなりません。新しいサービス経済時代に対応した政策づくりが私ども政治家に求められています。それはGDPのプラスを競い合ったり、開発をするということではなく、もっと我々自身の心の豊かさ、時間のゆとり、趣味を楽しんだり活かしたり、あるいはボランティア活動やNPO・NGO活動をしたり、そういうことから得られる豊かさをサポートすることではないでしょうか。
 これからはそういったものが大事になってくる時代ではないかと思います。

 新しい21世紀を迎えまして、今日は本当にこんなに大勢の皆さんに集まって頂きましてありがとうございました。これからも頑張ってまいります。