よこみち孝弘と新年交礼会
横路孝弘 挨拶全文

2002.1.12
 皆さん、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
 今日はお足元の悪いところ、しかも土曜日にもかかわらず、こうしてたくさんの皆さんに全道からお集まりいただきましたことを心から感謝申し上げます。

 いま、小納谷さんからも堀知事からもお話がありましたけれども、毎年の新年会ですとここで高田治郎先生(注釈:横路孝弘連合後援会会長)から笑顔で元気の良い励ましのご挨拶をいただいたところでありますが、お話ありましたとおり1月9日にお亡くなりになりました。ちょうど先生は馬年ということで、今年の11月になりますと満96歳だったのですが、享年97歳ということでございました。
 私にとりましては父の時代から、戦後から大変ご支援をいただき、お支えをいただきました。感謝の言葉も見当たらないくらいでございますが、心から感謝を申し上げたいと思います。
 先生の笑顔や、いつも「頑張れよ」と言って励ましてくれた姿や声を見たり聞いたりすることがもうできないと思うと、本当に悲しさでいっぱいです。高田先生に心から感謝申し上げ、そしてご冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 さて、皆さんからいろいろお話を聞いていると、今年も何が起きるかわからない、そんな年だと私も思います。経済も社会も戦後の日本社会の中で初めてと言っていいような状況ではないでしょうか。
 犯罪もどんどん増えて、安全なはずの日本で検挙率が非常に落ちています。ホームレスや自殺される方が残念ながら増えていって、倒産と失業が相次いでいる社会経済情勢。
 そしていま金融機関への検査が厳しく行なわれていますから、その結果によって銀行が引当金をしっかり積むということになると、自己資本比率をクリアできない金融機関も出てきます。毎年「3月危機」と言われますけれども、今年はまさにそんな深刻な状況ではないかと、金融機関に15兆円税金を投入しなければダメだという声さえある状況です。
 そんな中で、小泉さんの構造改革に対して国民の8割が支持を与えています。
構造改革の中身、これは正しいことをやっている点もありますし、間違ったことをやっている点もあるわけで、そこを議論してはっきりさせることが我々政党の大きな仕事ですけれども、最近は批判をすると抵抗勢力だといって切り捨ててしまう状況です。
 民主主義というのは、批判する勢力があって初めて成り立つ制度、仕組みです。野党第一党が批判する精神を失ってしまったのでは、益々構造改革の内容がはっきりしません。私はいまの日本の現状を、右向け右と言われて国民全体がそんな方向にワーッと流れていく異常な事態だと、非常に危機感を持っております。
 私ども民主党は非常に大きな責任を持っていると考えています。野党第一党の果たすべき役割は、やはり与党をしっかりチェックすることです。そして与党に代わって政権を担う、そういう受け皿政党として存在しなければならない。そういう政党を日本につくろうという思いで皆さんと一緒に民主党を立ち上げて今日まで来たわけですけれども、残念ながら今のところはそうではない中で、大政翼賛会的な政治に日本の状況が流れていっているのではないかと思っております。

 二つ三つお話をさせていただきたいと思うのですが、11月に東京でアフガニスタンの被災者の人々への街頭カンパ活動を行っていましたら、二人の方からこういう話を聞きました。その方は私立学校の先生ですが、「いま生徒がどんどん辞めていくんです。親が失業したので辞めてしまうんです。何とかならないんでしょうか」という話を聞きました。
 いま特殊法人改革の中で「日本育英会」が大きな問題になっています。本当はいまこそ育英会が大いに活躍しなければいけないときなんです。育英会の奨学金には無利子と有利子の二つあります。無利子奨学金は学校長の推薦が必要です。いま高校生、大学生合わせてだいたい75万人くらいの人がこの奨学金を受けて勉強しています。
 これに対して「いや民間でちゃんと供給できるんだから、官はもうその役割を終わったからいいじゃないか」というのが特殊法人改革の大きな流れになっています。役割が終わったものもありますけれども、では育英会事業は役割を終えたんでしょうか。銀行も教育ローンでお金を貸してくれます。しかし親が借りるんです。親の所得についての制限があり、所得の低い人には貸さないんです。失業した人に銀行が子供の教育ローンでお金を貸してくれるかといったら貸してくれません。
 育英会のほうは本人が借ります。親の所得に制限があり、所得の高い人はダメなんです。所得の低い親を持っている子供さんに育英会はお金を貸してくれるんです。
 ところが来年度予算の中で、小泉内閣は1万6千人分の無利子奨学金をカットしたのです。つまり民でできることは民でやるようにしようと。いま、お父さんが失業したから高校を辞めざるを得ないような子供さんがいる。米百俵を言うならば、こういう育英会の奨学金事業は充実しなければいけない。無利子の奨学金の制度は拡充しなければいけない。人に対して投資をするといいながら、やっていることは実はこういう正反対のことなんです。

 あるいは昨年の暮れに青木建設が倒産したとき、小泉さんは「構造改革の成果だ」と言った。あの企業の経営内容はよくわかりません、厳しい環境だったかもしれません。しかしそれにしても年末を控えて、関連企業や下請け、中小企業で働いている人たちの生活のこと、あるいは中小零細企業の経営で努力している人の苦労に思いが行かなかったのでしょうか。
 いま政府系金融機関についても特殊法人改革の中の非常に大きなポイントになっています。私はある方にお願いして、全国の中小企業にアンケートをしていただきました。そうしましたら、政府系金融機関を使っている企業の70%の皆さんは、統合は必要だろうけれどもやはり残してほしいというのが圧倒的な声でした。
 いま一般の金融機関の貸し出しは毎年減っていっています。では減っている中で中小企業をどこが支えるのか。やはり政府系金融機関の果たす役割は日本の中小企業にとってまだまだ必要なんです。
 それなのに、特殊法人改革「官から民へ」ということで、あまり議論もされないままなくなっていく。先日も大工さんの集会に顔を出しましたら、住宅金融公庫がどうなるかということで、住宅を建てるのをみんな躊躇して、今年は建築が大幅に減るだろうと皆さんが心配されていました。

 そういう問題点をしっかりと議論するのが本来野党の役割なんです。しかもこの小泉改革の中で、向かっている日本の将来の姿を考えてみますと、竹中さんなどがよく言っているのは、要するに強いものをより強くしなければ日本の経済は蘇らない、むしろ弱い立場の人は少し弱いほうが、淘汰することが必要なんだという議論をされています。
 私どもは、経済は市場経済でいいと、自由で透明でフェアな競争が行なわれればいいと思いますけれども、しかし社会まで市場社会では困るんです。医療や教育、雇用などの分野に市場原理が深く入ってくると問題が起きます。
 いま医療改革の中で提起されている問題は、保険内診療と保険外診療を組み合わせた「混合治療」をやろうという点です。混合治療が本格的になって、しかも医療財政が厳しいから抑えるということになると、お医者さんはやむを得ず「あなたはこの範囲の治療でいいですか? もうちょっと効き目のある高い薬があるけれども自己負担ですよ。どうしますか」と患者さんに言うでしょう。保険内治療は抑えられて保険外治療でということになりますと、国民皆保険制度の基本が崩れて、お金のある人は良い治療を受けられるけれども、お金のない人は充分な治療が受けられないということになりかねないんです。そういう方向に今の構造改革は進んでいっています。
 労働基準法についても、今ではもう大いに改正しようではないかという議論がたくさん出てきています。

 ですからいま私どもにとって本当に必要なことは、この構造改革の中身をしっかり見極めること。そしてやってはいけないことはさせないこと。そのためにはまずやはり民主党がしっかり野党第一党としての役割を果たさなければなりません。
 私も仲間と集まりまして、このままの民主党ではダメだと、やはり結党の原点に返って、しっかりと国民の皆さんの期待に応えられる民主党にならなければ、日本の民主主義が死んでしまう、そういう決意で今年は頑張っていきたいと思っております。
 同時に今の小泉政権が、本当に何が起きるかわからないこの経済や社会の状態の中で、潰れる可能性も大いにあります。そのときに我々がしっかりとその政権を受け継ぐ、我々が政権を担えるような体制を野党の中でしっかりつくっていかなければなりません。
 そして野党の中で本当にそれが担えるかどうかということの議論をしていかなくてはいけない。そうでなければ、挙国一致内閣、大政翼賛会というような政治の流れに日本の政治も流れていくのではないかというように思っておりまして、私は本当に久しぶりに社民党の土井さんや自由党の小沢さんなどと、ともかく野党の中で一緒に政権を担えるかどうかというベースの議論をしていこう話しました。また同時に、民主党内でもそういうことをしっかりやらなければいけないわけでして、党内の体制を強化し、党内外でも活動していきたいと思っております。

 また有事立法など、この社会が本当に右へ右へと傾斜して動いていく中で、私ども政党の力だけではなく、危機感を持っているたくさんのNPO組織もございますし、学者や文化人の人たちもおります。そういう人々と一緒に、大きな運動を展開していかなければいけないと思っております。
 アメリカでのテロに対するアフガニスタンへの報復戦争が行なわれたとき、ワシントンでもニューヨークでも、パリでもロンドンでも、この戦争に反対する声が大きく上がったんです。ところが日本だけは残念ながらほとんどその声がありませんでした。やはり我々が中心になって声をかけ、そして同じ気持ちの人々が集まって活動していく必要があるんだという思いを非常に強く感じました。
 そんな中、日本で一番積極的に活動したのは様々な無数のNPOで、私のところにたくさん署名をいただきました。インターネットなどを使って1週間で1万人の署名を、ある意味では世界中から集めて、そして日本の自衛隊が出て行かないように国会に請願してほしいという活動が本当にたくさんありました。
 そういう人々の思いと共通な思いを持っている人々のネットワークを私どもがしっかりつくっていかなければ、また有事立法の議論、あるいは憲法改正という大きな流れ、そして社会は市場原理主義だ、国家主義だといういまの政治の流れを食い止めて変えていくことにはならないだろうと、そんな思いで頑張っていきたいと思っております。

 自衛隊が出て行きまして、今どこで何をやっているのか何も報道がありません。出て行くときだけ姿が映りました。つまり軍事行動で秘密だからです。
 しかし現実にやっていることは武装したアメリカ兵を輸送したり、武器弾薬を運んでいます。そしてアメリカ艦船と飛行機に対して燃料を補給しています。我々の税金で80億円分の燃料を買って持っていっているんです。ですから我々国民の税金は、爆撃機の燃料になってアフガニスタンに行って爆弾を落としているということを、いまこの瞬間もそういう行為が行なわれているということを私どもは忘れてはいけないと思います。
 アメリカのテロ事件をきっかけに、それぞれ皆さん方いろんなことをお考えになったと思います。私は、亡くなった人の家族の写真を持ってニューヨークを歩いている人の映像が出たときに、これはどこかで見たことあるなと思い起こしていましたら、それはチリでの出来事だと思い出しました。選挙で選ばれたある政権が軍部のクーデターによって、これはアメリカがクーデターの応援をしたんですが、そのクーデターで数十万人が拷問されたり行方不明になったりしました。その行方不明になった家族の写真を持って女の人が街を歩いている映像だったんです。しかも調べてみたら同じ9月11日でした、今から29年前の話でございます。
 ですから世界ではそういう悲劇がたくさんあるんです。今度のことで世界がアメリカに大変大きな同情を寄せました。同時に、あの9月11日はあのテロだけではなく、多くの9月11日が世界の中にあるんだということを私どもは忘れてはいけないと思いますし、アメリカに世界の人々が同情を寄せたように、アメリカ自身も他にいろんな9月11日があるんだということを忘れないでほしいという思いが非常に強くいたします。
 何といっても『平和』であることが一番なんですが、ブッシュ大統領は「今年は戦争の年だ」と言っております。
 テロ支援国家ということに行動範囲を広げれば、イラクだってソマリアだって北朝鮮だってその対象になってしまうのです。そのときに日本の自衛隊はさらに協力するんでしょうか。
 私はそんな意味で、今年は国内の経済社会状態、そして世界や日本の平和、安全保障の問題など本当に大きな問題を抱えた年だと考えまして、新たな決意で今年は頑張っていかなければいけないと思っております。

 城山三郎さんの随筆集に「打たれ強く生きる」という題の随筆がございます。これは、ボクサーというのは一発で倒す力を持っているボクサーもチャンピオンだけれども、打たれても打たれても倒れないで、そして戦いに勝ち抜くボクサーが本当のチャンピオンなんだという随筆です。私も打たれ強く本年は大いに頑張っていきたいと思っておりますし、やはり皆さんの応援も必要です。
 今日もたくさんの方にお越し頂きましたが、中小企業の皆さんは、打たれても打たれても何とかみんなで頑張ってこられていると思います。ですからみんなで打たれ強く生きていきたい。
 また城山さんの随筆集の中に「3本の柱」というのがありまして、人間が生きていく上で、仕事と家庭と個人の趣味、この3つの柱がしっかりしていないとダメだと書かれていました。日本はどうも企業中心の人間で、企業の中のことが人生を大きく左右してしまうけれども、もっと家庭と個人の趣味、この柱を持っていかなければいけないということでございますので、私も家庭を大事にして、そして趣味も大いに楽しみながら、打たれ強く生きていきたいと思っておりますので、どうぞ皆さんよろしくお願いをいたしたいと思います。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。