衆議院予算委員会質疑議事録                         2000年8月2日(水)

○横路委員 私は、沖縄サミット並びに日本の外交についてこれから御質問をしたいというように思います。
 私は、サミットが沖縄で開催されるという決定を聞きましたときに、これはいい場所の選択をされたなというように思いました。それは、何といっても二十世紀最後のサミットなわけですね。ですから、世界の首脳が集まって、二十世紀というのは戦争の世紀でありましたから、戦争の反省をしっかり行って、そして二十一世紀に平和のメッセージをしっかり伝える。
 沖縄は、御承知のように太平洋戦争の中で大変な激戦が行われたところでございまして、沖縄県民を含めて二十四万人の方があそこで亡くなられているわけですね。しかも、世界で、二十世紀はこの二つの大戦の後にも、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争と大きな戦争があり、そのほか局地的な紛争がたくさんあったわけでございますが、沖縄は、いわばその三つの、朝鮮、ベトナム、湾岸という戦争の一つの大きな拠点にもなったわけであります。
 沖縄は、長い間米軍の統治下に置かれていた、そして今現在、在日米軍基地の七五%があそこに集中をしているという場所でございますので、まさに二十世紀をしっかり総括をして、二十一世紀の展望を明らかにしていくという場所としてはふさわしい場所だったというように思いますし、決められた小渕さんも、アジアの視点で沖縄から平和のメッセージをと、こう言われていたわけであります。
 しかし、いろいろ会議を重ねてやられた、例えばG8の宣言文などを見ましても、そういった具体的な、二十世紀を総括をして、戦争への反省、そして二十一世紀を平和の世紀にしていくというメッセージというのはほとんどありませんでしたね。いわばその一番基本的なアジアの視点から、しかも沖縄の場所で、二十世紀を反省をして二十一世紀を展望する。
 総理、本当はどういうことを議論しなければいけなかったと思いますか。私は、そんな意味では、まさに平和のメッセージがあそこから力強く発せられたというようには思いません。みんな国民、そう思ってがっかりしていると思うんですね。
○森内閣総理大臣 二十世紀最後の節目の年のサミットとして、世界の直面するさまざまな課題に対しましてG8がいかに取り組み、また二十一世紀を平和と希望の世紀にするために何をなすべきか、首脳間で活発で実り多い意見交換を行いました。その結果、沖縄IT憲章、それから朝鮮半島情勢についての説明、あるいはG8コミュニケ等を発表いたしました。私は、沖縄から明るい力強い二十一世紀への展望を示すことができたと思っております。
 何か横路議員は、そこで戦争に対する反省云々だとか、そういうお話が入っていないということをおっしゃりたいのかもしれませんけれども、G8のいわゆる政治セッションの中ではそうした話の会話は随分ございましたし、それから、午前中にもここで私申し上げましたけれども、クリントン大統領が平和の礎で演説をされて、そしてその後の、沖縄の知事さんを初めとして多くの皆さんからお話を聞かれたことについて、各国首脳に非常に強い彼の感情を入れてお話をされておりまして、私は本当によかったな、沖縄でそうした、お互いに、今あなたがおっしゃったように、この百年というのは、まさに前半は戦争に明け暮れた、そういう二十世紀であったと思います。しかしまた、後の半分は、恐らく、科学技術が発展して、また経済も発展して、栄光の時代を迎えつつある、そういう世紀だったと思いますから、そういうことに思いをはせてさまざまなお話をできたということは、私は極めてとうとい経験だったと思うし、すばらしいサミットだったと思っています。
 今、皆は何もそんなこと思っていませんよ、がっかりでしたよと、どういうことからそうおっしゃるのかわかりませんが、最近の沖縄の新聞を拝見いたしましたら、沖縄の県民の皆さんも約三分の二の方々が大変よかったという、そういうアンケートがたしか二、三日前の新聞に出ておったことも私は拝見をして、大変私もそれについて感激をいたしているところでございます。
○横路委員 私が申し上げているのは、世界の平和と安定のための具体的な取り組みということが方向性として示されなかったということを申し上げているわけであります。
 私は、二十世紀の誤りの一つといいますか、今、前半は戦争で後半はそうでないようなお話がありましたが、前半は二つの戦争がありましたが、後半だって朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争とあって、それはまさに沖縄が大きな拠点になったわけですね。私は、やはり一つは、科学技術がまさに発展していく中で核兵器が開発をされて、そしてその核兵器というものが使用された。日本の広島と長崎がその大きな被害を受けたわけであります。
 私は、二十一世紀を展望する場合に、やはり一つは、東西冷戦が終わりまして、核の恐怖から解放されたというように私ども思ったわけであります。現に、一九九一年、九三年とかけまして、第一次の戦略兵器の削減条約などが米ソ間で結ばれて、核弾頭の削減というような話し合いがずっと進んでいったわけであります。
 しかしながら、核軍縮がさらに進み、核拡散が防がれるという状況があったかといいますと、インド、パキスタンが核実験をやったり、あるいはアメリカの上院で包括的な核実験条約、CTBTの批准について、これを反対するというようなことが行われたわけですね。
 本年は、御承知のようにNPT、核拡散防止条約の再検討会議が開かれたわけであります。したがって、私ども日本がまさにリーダーシップをとって、核軍縮と核拡散をどのように防いでいくのかということは、これはまさに今の、二十一世紀に向けての、一番大きな課題じゃありませんか。そして、まさに日本がそれはリーダーシップをとらなければいけない点でしょう。ですから、私は、首脳会談の中でそのことが十分話し合われて、その枠組み、取り組みの方向性というのが示されるということを期待したわけでありまして、それがG8の宣言の中には触れられていないということを大変残念に思うということを申し上げたわけであります。
 やはり二十一世紀に向かって核軍縮と核拡散の防止ということを確実にしていくために、いろいろな課題があるわけでありますが、私は、日本としてこれは一番大きな外交の課題だと思いますよ。総理、そう思いませんか。――いや、これは総理大臣。それは、外務大臣、いいです。総理大臣に。
○森内閣総理大臣 サミットに関してだけ私申し上げておきますが、今何か私は百年の前半で戦争が終わったようなことを申し上げたと。別に五十年で区切っているということではございません。
 それから、今お話ございましたように、科学技術が発達をしたということは、確かに大量殺りく兵器ができたということになる、また日本は、そのことによって大変な大きな、とうとい命を失い、犠牲になった国であるということです。しかし、逆に言えば、そのことが契機として、やはりそういう大量殺りく兵器はつくってはいけない、使ってはいけないということになったんだろうと思いますね、世界の情勢というのは。そういう意味では、本当にとうとい犠牲を私たちは払ったことになるわけですけれども、科学技術が大量殺りく兵器をつくり、そしてその大量殺りく兵器は使ってはならないということもまた、これはお互いに人間として戒め合ったということを私は先ほど申し上げたかったわけです。
 それから、沖縄サミットでは何もそういう話がなかったじゃないかということですが、より安定した世界に向けた取り組みとして、紛争予防の分野で、地球社会全体で予防の文化を推進していくべきだということをきちっと明記いたしております。そして、軍縮や不拡散、軍備管理の分野では、包括的核実験禁止条約の早期発効などに向けた決意もこの中に述べられております。
○横路委員 いや、宮崎の外相会議の中でいろいろな議論があったというのは承知していますけれども、私は、今、核軍縮と核拡散防止というのはやはり最大の課題だと思いますよ。その一つだと思います。やはり何といってもNPTを着実に推進していかなければいけないし、カットオフ条約、プルトニウムなどの生産を禁止していくということ、あるいは核の先制使用の禁止でありますとか、非核地帯の拡大とか、いろいろな課題があるわけですね。そのことをいろいろ議論していかなければいけない。
 その中で、今直面している問題の一つは何か、国際社会の中で何かというと、これは外相会談では議論され、しかし首脳会談では余り議論されなかったようでございますが、NMDの問題があるわけであります。アメリカの本土ミサイル防衛というこの構想について、やはり一番問題があるんじゃないかというように私は思っています。
 ミサイルをいわば迎撃ミサイルで撃ち落とすというシステムそのものは、いわゆるABM制限条約、弾道弾迎撃ミサイルの制限条約に反することになるわけですね。なぜみんなが心配しているかといいますと、核というのは、米ソ間でいいますと、お互いの核の先制攻撃があったときの報復力からいわば成り立っているわけですね。これは際限がなくなるわけです。防衛網を張っていくことになると、さらにそれを突破しようという限りない核軍拡になっていくから、これをやめようということでABMの制限条約ができているわけであります。
 そんな意味で、このNMD構想について外相会議ではいろいろと議論されたようで、それは後で外務大臣にお伺いしますが、まず総理大臣、一体このNMD構想というものについてどう考えておられるのか、我が国は一体どうしていくのか、この点、まずお答えをいただきたいと存じます。
○河野国務大臣 事実関係でございますから、私から御答弁をさせていただきたいと思います。
 アメリカがNMDについての構想を持っているということは、御指摘のとおりでございます。しかし、この構想については、まだそれがどういうふうになっていくかということは確定をされたというふうに承知をいたしておりません。むしろ我々が考えておりますことは、国際社会の中に、あちこちに弾道ミサイルというものが拡散されてきた、それによってアメリカが、本土が攻撃をされるという不安、心配を持っている。そういう場合に、アメリカとしても、自国をどうやって守るかということについて考えるということは、これはあり得ることだろうと思うのでございます。
 ただ、それについてどういう守り方をするか、あるいは外交的な努力によってそれを守るという方法もきっとあるだろうと思いますし、あるいは技術によって守るという方法もあるだろうと思います。いろいろな方法を考えることになるだろうと思いますが、本土を守ろうとするアメリカの気持ちの一つとしてこの構想があるということは理解できるのではないかというふうに我々は思っているわけでございます。
○横路委員 今度の宮崎の会議の中でもいろいろ議論がありましたのは、結局は、これはドイツやフランス、カナダも含めて、反対というか問題があると言っているわけです。
 それは、今日までやはりいろいろと軍縮に向かって努力をしてきたわけですね。そういういわば軍備管理とか軍縮の体制そのものについて、この問題ははかり知れない影響を与えるんじゃないかということを心配しているわけです。アメリカがそういう体制をとれば、今度はそれを突破しようという軍備拡大競争が働くということを、みんな世界各国が心配しているわけですね。ロシアや中国ももちろんこれについて反対しています。
 この点について日本政府は、これはどうなんですか、賛成なんですか、反対なんですか。大いにやれという話なんですか。そうじゃなくて、私が冒頭申し上げましたように、やはり核の軍縮ということ、これはもう非常に大きな課題なんだから、いわばこれからも軍備は管理していく、軍縮を進めていくという観点に立って、これは世界の軍拡を引き起こすからやめようじゃないかというのか。
 河野さんは黙っておられたというように新聞で報道されていますけれども、これは総理、どうなんですか。きのう参議院の本会議で御答弁されたようですが、基本的に、このNMD構想というものについてどういうお考えなんですか。
○森内閣総理大臣 今外務大臣からお話がございましたように、近年の弾道ミサイルの拡散が自国の安全保障に対する深刻な脅威というふうにアメリカはとらえておって、これに対処するための外交努力を行うと同時に、NMDの計画を検討しているということだと思います。そういうアメリカの立場に対して、我が国としては、それは理解ができるということを申し上げているわけです。
○横路委員 これは各国、大体G8に参加した国みんな、ほとんど反対だったと思うのですね、アメリカ以外は。それについてはどうなんですか。こういうヨーロッパの心配についてどう考えますか、総理。
○森内閣総理大臣 確かに、具体的にこの問題はサミットでは取り上げられませんでしたが、沖縄での首脳会議では、二十一日のワーキングディナーにおきまして、世界の安定、そういうテーマで議論を行いました。
 しかし、恐らく、このワーキングの中で共通したテーマとしてお話し合いをするということは適当でないという判断を、アメリカも、そしてまたプーチン大統領もそういうお考えをとられたんだろうということで、最初に私はどのような議題を取り上げましょうかということを皆さんから意見を求めて、そして議論を始めた中には、この問題は取り上げられないということになった次第です。
○横路委員 きょうは余り時間がありませんから詰めて議論はしませんが、日本も実はTMD構想、戦域ミサイル防衛ということで、今年度予算二十一億円も計上してやっているわけですね。発端は北朝鮮のテポドンだったわけであります。アメリカも初めは北朝鮮と言っていた。しかし、朝鮮半島は、後で議論しますが、非常に大きく動いて変わってきているわけですね。
 私は、このNMD構想というのは、ロシアがこれに対抗措置をとるとしたら、MIRVという多頭核弾頭をICBMに載っけて飛ばすとか、あるいは潜水艦などを中心とした海上の戦力拡大になっていくのですね。あるいは中国も、核兵器をある意味で言うとさらに近代化して促進していこうという軍拡に対して、軍拡競争をまさに引き起こす引き金になる問題だということを、総理、これはひとつ十分認識をしておいていただきたいと思います。
 私は、ともかく今度のサミットの中で、まさにこういう大事な問題をもっと議論してほしかった。ただ、残念なことに、見ていると、例えば遺伝子操作食品の問題などを含めて、どうもアメリカとほかの国が対立しているような問題があると、日本は傍観をして、その間で議論しないで避けたということは本当に残念に思っております。むしろ、積極的にこれらの問題に対して議論をしていくという姿勢が大変大事ではないかというように思っております。
 次にもう一つ、このサミットに関連して、プーチン大統領との間で首脳会談が行われました。私はその首脳会談の記録を見てびっくりしたのですけれども、九月に会うわけですね、「九月の会談では難しい問題についても率直に話し合いを進めていきたい。」というような表現をされておられます。
 今度の日ロ首脳会談というのは、まさに二〇〇〇年までに平和条約を締結しよう、その前提としては領土問題があるわけですから、何でこんな「難しい問題についても率直に」というような持って回った言い回しをされるのですか。もっとこの問題について大いに議論しようじゃないかと、率直な話がどうしてできないんですか、総理。
○森内閣総理大臣 難しい問題を避けて通ろう、私はそういうことを申し上げておりません。
 会談は、やはり日本の立場もあればロシアの立場もあります。プーチン大統領の御発言の中をよくこれは吟味して精査しなければなりませんが、微妙な問題、敏感な問題というような、そういう発言をされたような記憶がございますが、微妙な問題や敏感な問題というのは我が国にとってはまた重要な問題である、したがって、そこのところだけを話し合うということになるとなかなか話し合いがしにくいというような、そういうニュアンスのお話がございましたから、私は、そうではないでしょうと。むしろ、あなたが敏感、微妙とおっしゃることをきちっと話すことが大事であって、全体としてまず、日本とロシアとのお互いの大事な問題をお互いに議論をし尽くしていくことが大事なのではないかということを申し上げておりますから、そこのところは、何も私は、避けて通ったという、そんな思いはございません。
○横路委員 御承知のように、対ロシアとの外交というのも、今まで苦労しながら、しかし国会もバックアップしてやってきたわけです。経過はいろいろありますが、東京宣言、それからクラスノヤルスクの合意、川奈の提案、モスクワ宣言というように流れてきまして、その中では、何といっても、東京宣言に基づいて二〇〇〇年までに平和条約を締結するということで合意をしてきたわけですね。
 それで、具体的な川奈の提案があり、それに対してモスクワの会議で向こうの返事があり、今度はそれに対してこちらの方がまた考えを述べるということだと思うんですが、このとき一貫してきたのは何かといいますと、領土問題の解決なくして平和条約の締結はないということですね。これはもう国会も含めて、我が国は、そういう姿勢でソ連当時からロシアに至って外交交渉をしてきたわけですよ。この姿勢は、総理、変わらないんでしょうね、これは。
 いや、総理、これは大事なところ、大事な、こんな基本的な姿勢……
○甘利委員長代理 河野外務大臣。
○横路委員 外務大臣、ちょっと悪いですけれども、総理、答えられないんですか、それは。総理、答えられないんですか、こんな大事な問題で。
○河野国務大臣 委員長の指名ですから。
 日ロの首脳会談が九月の三日から行われるわけでございます。議員が御指摘のとおり、この首脳会談で、いわゆる議員がおっしゃる難しい問題について率直な話し合いが行われるということを我々は期待しているわけでございますが、議員がお話しのとおり、領土問題を解決し平和条約を締結する、こうした考え方は一貫して我々は持ち続けております。
 そのために、領土問題を解決し平和条約を締結するという我々の考え方をどうして貫いていくか、どうやって実現をするかということについて、さまざまな苦心、苦労、アイデアというものを我々はこれまでも出してまいりましたし、また、首脳会談でもさまざまな議論があってほしいというふうに私は念願をいたしております。
○横路委員 それは、いろいろな議論をしてきましたから、川奈提案というのはその工夫の一つでもありましょう。国会でもそれはいろいろ議論はありましたよ。五六年の共同宣言にまず基づいて、二島をともかく返還してもらって、二島を継続ぐらいでもいいじゃないかという議論もあったけれども、しかし、いずれにしても、領土問題の解決なくして、それと別に平和条約を結ぶという考え方は今までなかったわけですよ。
 今、九月三日にいよいよ交渉が始まるという一番大事なときに、しかも、外務大臣がタイのバンコクでロシアのイワノフ外務大臣と話しているときに、野中幹事長が、こういう一つの前提を解決しなければ友好条約はあり得ないという考えではなしに、並行して領土問題を考えていくことが大事だと言って、いわば切り離し論を打ったわけですね。
 これは、総理、こんなことで外交交渉になりますか。一番今大事な詰めの作業に入っているときに、領土問題はいいんだ、切り離すんだと。これは、総理、まず北方領土問題の解決なくして平和条約なしという基本スタンスは変わらないんでしょうね。
○森内閣総理大臣 先ほど触れましたように、日本側だけの主張で通って二国の会談とか協議というのはあり得ないわけでありまして、私は、就任をいたしました四月の末に、サンクトペテルブルクで初めてプーチン大統領とお目にかかったときも、やはりプーチン大統領も、まだそれは就任前のことでございましたから、日ロの問題についてはかなり慎重なお立場でございました。ですから、日本に公式的においでをいただくということをまず決めることに正直申し上げて少しエネルギーを費やしました。しかし、まずは、次はプーチン大統領が訪日されるということですよということで、最終日には、最後の時間にはそのことが決定をしたわけです。
 今回沖縄でお話を申し上げましたときにも、先ほど申し上げたようなことで、微妙、敏感というような問題がございますから、これはやはりロシアの国の中の考え方、政府部内の考え方がいろいろ出てきているんだなというふうに思って私はそういうお話を聞きましたけれども、先ほどから申し上げておりますように、その微妙や敏感とおっしゃるようなことも、そのことも、全体の平和条約ということをきちっと話をしなきゃそのことだって解決しないわけだから、きちんとそういう話し合いをいたしましょうということで、それでは三日から五日まで参りましょうということが最終的に決定したわけです。
 そこで、大事なことは、今外務大臣もお話しされたように、問題は大変容易ではないということは承知もしています。それから、これまでの長い積み重ねがございます、これも承知をいたしております。政府としては、北方領土問題を解決して平和条約を締結するという一貫した方針のもとで、これから引き続き全力を傾けていくということは当然のことであります。
○横路委員 了解できる答弁ではないんですね。
 この時期にプーチン大統領サイドからは、平和条約の締結あるいは領土問題の解決は難しい、そういう報道に対する話などがずっと流れてきているんですね。あたかもそれに呼応したかのような今度の幹事長の発言なんですよ。この幹事長の発言をどう考えているんですか、総理。いやいや、これは総理ですよ、外務大臣。総理にちゃんと発言してもらわないと。どうしてこんな大事な問題に答弁できないんですか。
○河野国務大臣 外務大臣として、外務省の人間をして幹事長の真意を当たらせておりますので、私から御答弁をさせていただきたいと思います。
 幹事長の御発言は、東京宣言を前提として、あるいは踏まえてと申し上げてもいいかもわかりませんが、東京宣言を前提として日ロ問題を当然考えておるということをまずおっしゃっておられます。そして、とにかく二〇〇〇年をめどに何とか結論を出そう、こういう努力を今しているわけでございますから、先ほど私申し上げましたのは、さまざまなアイデアが日本の国内にもあるということで、これはこれで私は結構かと思っております。
 ただ、交渉をいたします人間にとりましては、もう基本的には、先ほどから申し上げておりますように、領土問題を解決して平和条約を締結する、こうした大方針を背中に負うてこれから交渉に臨むということは当然のことということを幹事長も了としておられるわけでございます。
 今総理からもお答えがございましたように、この話は、クラスノヤルスク合意、東京宣言と、エリツィン大統領を相手に積み上げてきた事柄でございます。突如エリツィン大統領の辞任ということがございまして、私は、ことし前半は、エリツィン大統領のこうした言い方はロシアを代表して日本の国に言っていることだから、後継者も当然この問題については、この話は継続なさることでしょうねということの確認を何回もいたしまして、当然そうですという御返事をいただいてまいりました。
 私から申し上げると、少し残念なことは、エリツィン大統領の後任のプーチン氏が大統領として本当に動き出すまでに、半年とは言いませんけれども、四カ月ほどの時間をそこで経過してしまったということは非常に私としては残念でございまして、何としてもそうした時間的経過をカバーしてこれから最後まで努力をしたい、こう考えております。
○横路委員 ロシアとの領土問題に対する交渉は大変だから、我々もいろいろな言いたいことがあってもみんなで応援していこうということで、国会でも今まで何度も決議をしてやってきたわけですよ。それが交渉直前になって、今与党の幹事長が、切り離し論なんですよ、話は。
 それは、いろいろな、東京宣言を踏まえてとかなんとかあったって、総理、ちゃんと意見を統一してくださいよ。こんなんじゃだめです。こんなんじゃ外交も何もなりませんよ。ロシア側は、もう領土問題は日本はいいんだなと思いますよ、こんな発言を許しておったら。
○森内閣総理大臣 先ほどからたびたび申し上げているように、プーチン大統領は、微妙、敏感という表現を、通訳がそうしていましたけれども、当然そのことを指しているんだろうと思います。もう少し詳しく述べれば、この問題は日本にとって重要な問題であることは十分承知をしておられ、しかし、自国にとって、つまりロシアにとっても、このことは大変微妙な、国内の中にいろいろな問題を波及するんだというところを、表現もきちっとしておられました。
 しかし、先ほど申し上げたように、まずお会いをするということが大事でしょうと。それから、四月末にお話をしたとき、これまで積み重ねてきたエリツィン、橋本、小渕、これを積み上げた前提でお会いするんですよ、おいでいただけますね、そのことで交渉しましょうと言ったら、それはわかった、結構だということから、この来日の日程が固まってきたわけです。
 今、その幹事長の御発言というのは、これは、日ロ両国の中にはそれぞれいろいろな考え方があるのはやはり当然だろうと思います。種々の考え方が表明されるということは、日ロ関係を発展させていこうとするまた熱意のあらわれでもあろう、こう思っております。ですから、全体としては、野中幹事長がぜひ日ロのこの問題を解決したいという、その熱意のあらわれの中からの発言だろう、私はそういう文脈の中で受けとめております。
 ですが、先ほどからたびたび申し上げておりますように、私は、この北方四島の帰属の問題を解決して、そして平和条約を締結するという、この東京宣言を前提にして議論していくということは当然なことだ、こう申し上げております。
○横路委員 ともかく、自民党の幹事長が、領土問題と平和条約問題を切り離してともかくいこうやと言うこと、確かにそれは交渉ですから、しかも相手がかわって、やっている人たちは苦しいと思いますけれども、しかし、この大事なときに、これは物すごい大きな政策転換ですよ。方向転換ですよ。自民党、いいんですか。自民党全体で、これはもう幹事長が言ったんだからこれでいくんだ、領土問題はもういいんだということになるんですか。
 総理、九月の交渉の前なんですから、こういう発言がどんどん出てきて交渉できますか、一体。まことに失礼ですけれども、森野中政権なんて言われていて、野中幹事長というのは物すごい大きな力と影響力を持っているわけでしょう。先ほどから総理だって遠慮されて物を言われないわけだ、外務大臣が出てきて答弁されて。ちゃんと野中幹事長と話をして、政府が交渉するのに大事なときなんだから、ちゃんと統一した見解を出してくださいよ。どうするんですか。領土問題、ちゃんと統一した見解を出してください。
○森内閣総理大臣 たびたび申し上げておりますように、政府は考え方を変えておりません。幹事長はいろいろなお立場で物を言っておられますが、先ほど申し上げたように、我々政府の考えと同じ文脈の中での考え方だということで一致をいたしております。森野中なんて失礼なことを言わないでください。
○横路委員 だから、言われないようにするためには、幹事長と会ったんですか。総理大臣、会ったんですか。会って直接ちゃんと統一をしてやるということでなければ、これは、ロシア側は何と思いますか。与党の幹事長が、これからやろうという話、分離でいいですよ、領土問題、いいですよ、領土問題はまた別にしよう、こんな発言をして交渉になりますか、第一。
○森内閣総理大臣 大変失礼なことをおっしゃっていますけれども、私は党の総裁でもあるわけで、役員会ではちゃんと幹事長と会っていますし、役員会の執行部の中でこの問題についての議論もきちっとして、統一をいたしております。新聞をよくごらんになってください。
○横路委員 それでは、総理大臣も野中幹事長の発言を了承、了解されているというように承ってよろしいんですね。
○河野国務大臣 先ほど来から総裁・総理が申し上げておりますように、森内閣の基本方針、そして自由民主党の方針というものは一貫しております。領土問題を解決して平和条約を締結する、そのための努力をするということで、もう一致しております。私はけさほど、この予算委員会が始まります前に、自民党の外交合同部会にも出てそうした説明をしておりまして、皆さんの了解は得られております。
○横路委員 自民党には、もう本当に、外交を責任を持って行うということもどうもできそうにない状況だということを申し上げたいというように思います。
 次に朝鮮問題でございますけれども、朝鮮半島の状況というものは非常に急激に動いています。何といっても、やはり金大中大統領のピョンヤンの訪問、南北会談の実現というのは大変大きなインパクトを与えたと思っております。その後矢継ぎ早に、ASEAN地域フォーラムへの朝鮮民主主義人民共和国の参加とかプーチン・ロシア大統領のピョンヤン訪問とか、そういう脈絡の中で日朝の外相会談が行われたということでございますが、こうした南北の歴史的な会談の意味というもの、それがこれから日本を含めた周辺へどういう影響を与えていくのか、まず、総理大臣から基本的な認識についてお伺いをしたいと思います。
○森内閣総理大臣 歴史的な南北首脳会談の開催を初めとしまして、朝鮮半島をめぐって前向きな動きが見られる中で、先般、初めて日朝外相会談が行われて、八月下旬に日朝の国交正常化交渉を開催することになったわけでありまして、私は極めて意義深い、こう思っております。
 今御指摘がございましたように、アジアにとりましても太平洋にとりましても、朝鮮半島の緊張緩和ということは極めて大事なテーマでございます。そういう意味で、一番基本的には、南北がどういう形でこれからお話し合いを進めて、どういうプロセスを経て統一の方向へ持っていかれるかということは、これは南北自体の問題だと思います。
 昨日、金大中大統領とも電話でサミットの報告の傍ら、それらの問題についても金大統領のお考えも改めて伺ったわけです。私としても、我が国としても、この日朝関係の進展によって北東アジアの地域の平和と安定の一翼をぜひ担っていきたい、こういう考え方でございまして、日朝外相会談、この成果を踏まえて、国交のいわゆる話し合いが進むということを期待したい、そう思っております。
○横路委員 ちょっと外務大臣にお尋ねしますけれども、日朝外相会議で、日朝間の過去を清算して新たな善隣関係というものをつくり上げていくんだということをお互いに約束したわけですね。やはり、過去の清算というのは、植民地支配という歴史があるわけでありますから、その反省に立った誠実な姿勢というものを保持して対応していただきたいと思いますが、六五年に日韓基本条約が締結されているわけですね。今回の場合、国交回復ということになりますと、やはり朝鮮民主主義人民共和国との間にも新たに平和条約を結ぶということで交渉を進めていくということでよろしゅうございますか。
○河野国務大臣 これは、これから国交正常化交渉を行うわけでございまして、議員がおっしゃるように、国交を正常化しよう、こういう目的で行う交渉でございますから、国交の正常化のために考えられるさまざまな問題について議論をし、最終的には日朝関係を最もいい状況にしたいというのが我々の念願でございます。
○横路委員 総理、金大中大統領と会われたときに、直接金正日総書記とは会って、直接意見交換を行うのがいいですよ、事務レベルで話をしてもなかなか話が進みませんよというアドバイスがあったというように聞いておりまして、総理もどこかで記者会見でそのことをお話しされていたと思うんですが、私はやはりそうだと思うんですね。
 確かに、問題はまずテーブルに着いて、ちょうど米朝の関係もそうですけれども、九四年にジュネーブで米朝合意ができて、そこからいろいろな分科会といいますか、ミサイルの協議だとか、それから朝鮮戦争のときのアメリカ兵の遺骨の収集の問題とか、いろいろなテーマごとの話し合いというのを行ってきているんですね。
 ですから、お互いにいろいろな言い分があるわけですし、話をしなければいけない点があるわけですから、まずその枠組みをしっかりつくるということはとても大事だと思うんですね。その枠組みは事務レベルで積み重ねていってもなかなか難しいというのが金大中大統領の率直な感想だと思うんですね。
 したがって、私は、そんな意味でいうと、外相会談を精力的にやられて、それも大事だと思いますが、やはりトップ同士の話をするということも非常に大事だと思うんですね。そういうことでなければ、これは事務レベルで積み重ねていっても、またもう何年も何十年もかかるような話になりかねないと私は思っています。この点はどうですか。私は、金大中大統領のアドバイスを聞かれた方がいいと思いますが。
○森内閣総理大臣 金大中大統領のアドバイスを私は受けて、そして河野外相に、機会があれば外相同士でまずお会いになることがいいですよということをお話ししたわけです。まだ南北の首脳会談が始まる前に金大統領とお目にかかったときには、会うということが大変意味があるので、まず会うということから始めたい、何にも合意を得られなかったことが合意だったということもあるね、そういうお話をされていました。
 ところが、その後に、大変成果がある、そういう南北首脳会談でありましたから、これはお電話で、私はそれに対して大変そのことを率直に申し上げて祝意を表しておったわけです。
 そのときに、これは北朝鮮という政府のことですから、余りそういうことに触れることはよくないことだ、正しいと私は思いませんけれども、しかし、随分お話し合いが進みましたね、当初思っておられたより進みましたね、こう申し上げたら、やはり、恐らく事務的に積み上げていたらここまで来るのに十年かかったかもしれないね、直接話したので非常によくわかったし、お互いに理解を深めることができたよ、こういうことをおっしゃっておられて、そして、私に対して、日本もできれば直接お耳に達するように話す機会をできるだけ考えた方がいいですよということをアドバイスしますよ、こういうことでした。
 ですから、今すぐ私が金総書記と直接お会いするというようなことを今考えているわけではございませんけれども、やはり同じように、そういう意味で、外務大臣が外務大臣にお会いになるという機会がたまたまこれはあったわけですから、これはいいな、こう思ったものですから、河野大臣にぜひお会いになるように私はお勧めを申し上げたということでございます。
 直接そういう首脳同士で会うということも大事かもしれませんが、政府の責任ある立場の者がまず今回話し合うことができたからこそ、この八月の二十一日からの正常化交渉が再開をした、私はこのように歓迎をしているわけであります。
○横路委員 サミットの中でも朝鮮半島に関するG8の声明というのがあるんですけれども、ここで、例えば日本政府が従来から主張してきたのは、北東アジアフォーラム、つまり、朝鮮半島、今四者会談をやっていますけれども、それに日本とロシアが加わって、六者でもってこの地域の平和の話し合いをしていこうじゃないか、こういうような提案を前から日本政府もしているわけですね。
 ところが、この方針になりますと、何となく何かほかの国に支援をしてもらうというようなことが中心になっていて、日本のリーダーシップがこの中に見えないんですね。私はやはり、これからの外交で、この朝鮮問題も含めて、今までどっちかというと金大中大統領が大変対決より対話を選び、北風より太陽政策というか包括的な政策を選択され、それからアメリカは、ペリーさんが中心になって、大変中国だとか韓国とか日本とかいろいろな周辺の国の意見も十分聞き、そして北の意見も聞いて方向性を出すという努力をされてきたと思うんですね。私どもは、KEDOでお金を出す、いろいろな協力はしているけれども、日本自身が主体的に何か行動するというイニシアチブが全然見えないわけですね。
 今回こういう形で急激に動いているわけですから、何もバスに乗りおくれるとか乗りおくれないという話じゃなくて、基本的にこの地域の平和と安定ということのために、従来から日本は、ともかく朝鮮半島を見てきたわけでしょう。日本の安全保障政策の枠組みなんというのは、常に朝鮮半島を見てやってきているわけですね。こういう状況を踏まえて、やはり積極的にやるべきだと思います。
 私は、米朝の交渉などをアメリカの当事者から聞いたことがありますが、三十日も四十日も毎日交渉をやった、クリスマスを挟んで毎日やったというような経験を聞いたことがありますけれども、何か二カ月か三カ月に一回ぽっぽっぽっと会って、それで話なんか進みませんよ、このスピードの速い時代に。もっと精力的に詰めて議論をする、そのための基本的な方向性をしっかりやはり持つ、それはやはり北東アジアの平和と安定ということだと思うんですね。
 総理、そういう意気込みでやってくださいよ、これ。一回会って、また次何カ月か先に会うというのは、こんなことばかりやっているからだめなんです、これは。
○河野国務大臣 朝鮮民主主義人民共和国との間の交渉につきましては、基本的には、韓国、アメリカ、日本、この三カ国が政策調整をしながら交渉に臨んでいるわけです。これは、今横路議員もおっしゃったペリーさんの御努力というものがあって、その枠組みというものを見ながら、三カ国は、それぞれの立場、それぞれの役割というものもございますから、常に三カ国で政策調整をしながら北朝鮮政策を練り上げているということでございまして、日本がひとり何か蚊帳の外にいるということではございません。三カ国がそろって交渉についての相談をしながらやっているということでございます。
 我が方は、G8の中でも、確かにこの朝鮮半島について、森総理からも、アジア情勢というものについては、朝鮮半島問題が今極めて重要な、大きな動きが出ている云々ということを言われて、アジアの問題でございますから、私どもがリードをする形でG8の取りまとめをいたしております。
 ただ、残念ながら、例えばイタリーにせよカナダにせよ、次々と北朝鮮とは外交関係をきちっと樹立をしている中で、我が方はまだそこまでいかないという状況にございます。したがって、どうしても、若干外から見ると日本の動きが鈍く見えるかもしれませんけれども、私どもとしては積極的に対応したいと考えているわけでございます。
 繰り返して申し上げますが、何としても日朝関係というものを改善する、正常化する。もちろん、その正常化の一環として、懸案の人道問題あるいは安全保障の問題、こうした問題を我々は持っているわけでございます。先方もそれはよくわかっていると思いますけれども、そういう問題を解決しながら全体的な問題解決に当たらなければいけない、そういうふうに思っております。
○横路委員 時間ですので、終わります。